馴染みのない方へのレゲエのすすめ その1 -ROOTS前編-

2018年01月03日

今回から数回にわたって、レゲエに馴染みのない方に向けて、レゲエとはだいたいどんなイメージの音楽で、どんな楽しみ方が出来るのか、私なりに紹介したいと思います。一意見として聞いてください。

勿論、ブログ数記事で全体をつかめるような薄い音楽ではないので、レゲエファンの方が読むと色々言いたいことがあると思いますが、それはご愛敬ということで。

まず現代においていちばん広義の「レゲエ」とは、「ジャマイカで流行った音楽、又はそこから世界に派生した音楽」という意味合いだと思います。なので、単に「レゲエ」と言っても色々な音楽性のものがありますし、年代によってもまた違うので、「レゲエ好き」と称する者同士が会しても話が噛み合わないこともしばしばだと思います。つまり言い換えればレゲエには沢山のサブジャンルが存在するわけです。

私もレゲエの全体像は知りませんし、レゲエだけれども特に好きではない曲も沢山あるわけですが、今回から数回にわたって、その数あるサブジャンルのうちよく耳にする、「ROOTS」「DANCEHALL」「LOVERS ROCK」について私の好きな曲を紹介しつつ、少しでも興味を持っていただけるように面白いと思うポイントを述べていきたいと思います。

今回はまず、レゲエの中で最初に確立した、「ROOTS」と呼ばれる界隈を見つつ、レゲエの基本のリズムを紹介します。ROOTSは1970年代に流行って確立したもので、現代においてはこの70年代のスタイルを蘇らせるという意味合いを込めてREVIVALと呼ばれたりもします。

まずは最近のバンドを。

これはRaging Fyahというバンドのライブパフォーマンスです。この、ゆっくりめで曲調が暖かく、穏やかにノリやすい感じがROOTSと呼ばれる曲の特徴だと思います。この曲ではボーカルが歌い、ドラムが少なめの音符数で叩き、ベースが単純で空白のあるフレーズをひたすら繰り返し、キーボードの1人とギターが裏拍(2、4拍目)でコードを弾きつつおかずを入れています。また、もう1人のキーボードがPadを弾いて、コーラスも入っています。これが基本のバンド構成で、曲によっては更にサックスやトランペットなどの吹奏セクションやコーラス隊、ボンゴやジャンベ、ギロのような民族打楽器、あるいはサンプラーによるパーカッションが加わります。ベースのフレーズはレゲエのリズムにおいて重要なので、ベースの音がよく聞こえない(低音が出ない)スピーカーで聴くのはおすすめしません。

次は少し時代を遡ってこれ。

やはりギターが裏拍をとってベースが単純なフレーズを繰り返します。そして先の曲と同様に特徴的なドラムのリズム。これはワンドロップと呼ばれる、レゲエ特有のもので、3拍目のみにバスドラムとスネアが落ちます。スネアは、ひとつめの動画を見ると判るように、バチで縁の金属部分を叩くことで、民族的とも南国的ともとれる打音を出しています。規則的に3拍目に叩かれると思いきやイレギュラーになったりして、静かな変化を生み出します。またそうして普段のスネアの音を絞ることで、フィル(曲の節目)でスネアの面が叩かれたときにグッと盛り上がります。高くチューニングされたスネアやティンバレスの「カン!」という音が要所で鳴って独特の雰囲気を出します。全体として、それぞれの楽器が最低限の仕事しかしてないような脱力感あるノリが爽快です。ライブとかだと2,4拍でノッている方が多いようですが、全拍でノッている方もいますし、色々なノリかたのできるとにかくノリやすい音楽です。

ワンドロップといえばこの曲でしょうか。

ここまで聴いてボーカルの発音が独特だと気付かれた方もいると思います。これはパトワ語と呼ばれたりもする、色々な言語が混ざってできたジャマイカ(カリブ海)訛りの英語です。この、なんか発音やスペルは違うけど意味はなんとなく分かる感じがスラングとも結びついて独特な歌詞やフロウ(歌い方)を作ります。「Vibes」や「irie」なんて単語はレゲエシーン以外でも広く耳にするかもしれません。余談ですが、ディズニー・リトルマーメイドのセバスチャンはカリブ海の黒人がモチーフなので、中の人がわざとこの訛りを真似て発音しているそうです。「Under the sea」が「あんだーだしー」になったりしますね。

この流れでもうひとつ紹介したい曲があります。

こういう、リズムに乗せて言葉を詰め込む感じの歌い方がレゲエっぽいと感じる方もいるかもしれません。気付いた方もいると思いますが、この曲とひとつ前に紹介した曲、ボーカルを除くとほぼ同じですよね。レゲエでは、ボーカル以外の部分を「Riddim」(Rhythmのジャマイカ訛り)というのですが、レーベルがRiddimを作ってそれに名前を付け、様々なDEEJAYやシンガーがそれに自分の歌を乗せるという曲の作り方がよくあるので、同じRiddimの曲が沢山あります。因みにこの曲のRiddimは「Tropical Escape Riddim」といいます。また、クラブとかの「DJ」は曲をかける人のことを指すと思いますが、レゲエにおける「DEEJAY」は歌い手のことです(曲をかける人はselector)。

最後にもうひとつ、有名な曲を紹介しておきます。

レゲエのリズムは単調なのですが、この曲のように、ドラムやベースを止めて裏拍のコードのみにしたり、そこにベースを加えたり、逆に裏拍を止めたりと、一部のパートの音を消すことで変化を付けて曲を展開することが多いです。この曲のサビの歌詞を載せます。

Look 'pon di gully side

Do you see anything fi smile 'bout?

Look at that hungry child

Do you see anything fi smile 'bout?

Look at the school weh deh youth dem go fi get dem education

Do you see anything fi smile 'bout?

Look at the conditions of our police stations

Do you see anything fi smile 'bout, no 

https://www.jah-lyrics.com/song/morgan-heritage-nothing-to-smile-about より

この曲は、軽快なRiddimの半面、歌の内容はジャマイカの悲惨な現状を訴えています。ROOTSは平和や(プリキュアにおける使われ方と同じ意味での)愛、黒人の誇りを歌う硬派なものが多いです。サビの「Do you see anything fi smile bout?」が印象的です。「fi」は「to」の意味でよく使われるジャマイカ訛りです。「anything(エニティン)」の発音も面白いですね。

さて、ROOTS前編はこのへんにしておきたいと思います。レゲエの基本的な響きを少しでも知っていただけたなら嬉しいです。次はROOTS後編と称して、ワンドロップ以外のリズムなどを紹介したいと思っています。


INDEX

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レゲエの親戚,カリブ海の音楽:スカソカ&レゲトン

レゲエ調のアニソン、声優曲について:  
スカ調のアニソン 前編  後編 続編1 続編2


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