馴染みのない方へのレゲエのすすめ その2 -ROOTS後編-
閑話休題。その1でルーツレゲエの基本は知っていただけたと思います。ROOTS編でお話ししたいことは7割くらい終わったので、今回はなるべくいろいろな響きを紹介できたらと思います。
まず、ワンドロップ以外によく耳にするレゲエ特有のビートリズムに「ステッパーズ」と呼ばれるものがあります。またRaging Fyahから始めます(今イチオシのバンドなので)。
ワンドロップより硬くて重い感じがするかもしれませんし、ノリがいいように感じる方もいるかもしれません。ドラムがひたすらキックキックという感じですが、グラブミュージックなんかの4つ打ちとは違うノリです。この曲ではオルガンの音色が、よく「地を這うような」と表現される良い味を出しています。レゲエではよくオルガンが使われて渋い雰囲気を演出します。
他には、普通の8ビートに近いものも多いです。
出ましたProtoje。今回も車の後部座席からの登場です。ベンツがオーバーヒートするなんてとんだ災難ですね。こういうしっかりと地に足のついた感じの重さのノリもレゲエの特徴です。映像もフロウも含めて凄いレゲエっぽさを感じるかもしれません。この曲では裏でコンガっぽい民族打楽器の音が使われていて隠し味になっています。
ちょっと落ち着いた感じの雰囲気も得意です。(この曲を歌うDuane Stephensonも2回目の紹介ですが私のイチオシです)この曲では雰囲気を出すために、スネアに時々過度なリバーブをかけたり(パーーン、スァーーンって音)、ギターにディレイをかけて音を反復させたりしていますが、これもレゲエにおける常套手段です。こういったエフェクトをこれでもかというくらいかけて楽しむ、DUBというコワい(笑)文化があるのですが、それはまたいつかお話ししたいです。MVの中盤で変な踊りをしている人が出てきますが、ジャマイカの人はよくこういう、アニクラのオタクみたいなクネクネした踊りをするので面白いです。
こういう4拍目にスネアが来るようなリズムもよくあります。聴くととても気楽になれる曲です。
帝政時代のエチオピア国旗
さて、その1や今回を通して色々なMVを観ていると、登場人物がやたら赤黄緑の帽子や服を来ていたりすることに気付くと思います。この3色は「ラスタカラー」と呼ばれるもので、今ではレゲエのシンボルとしても使われています。元々は「ラスタファリ運動」と呼ばれる、ジャマイカで起きた思想運動のシンボルです。ルーツの歌詞で、オタクみたいにやたら「ジャージャー」言っていることに気づいた方もいるかもしれません。「Jah」とは神のことで、エチオピア最後の皇帝をJahの化身と捉えます。ジャマイカ人のルーツはアフリカから連れてこられた奴隷ですが、社会的に抑圧された人々による抵抗運動の中で生まれた、アフリカ回帰主義の色をもつ宗教的運動がラスタファリ運動だと理解しています。髪や髭を切ることは禁じられるらしく、ドレッドと呼ばれる長い髪を編んだ髪型をします。服用することで始めて意思決定や愛が生まれるとして、大麻(marijuana, ganja)を吸う人もいます。レゲエには、ラスタファリアンの集会で演奏される「ナイヤビンギ」と呼ばれる音楽を元にしたリズムの曲もよくあります。
夜に広場に集まって、火を囲んで民族的な太鼓を叩くイメージです。今では、レゲエっぽさを出すためにラスタカラーを身に着けたり、ドレッドヘアーにする人もいますし、別にラスタファリ運動と切り離してもルーツは楽しめます。
さて、ここまでルーツロックレゲエにまつわるうんちくをいろいろと紹介してきました。最後に、ルーツを語るならやはりこの人も紹介するべき、という人をひとり。
「レゲエの神様」Bob Marleyです。強いメッセージのある沢山の名曲を残しただけでなく、平和を願う信念を貫き、音楽を通じて人と人を結びつける様々な活動も行ったことから、こう呼ばれているのだと思います。この曲の、
Don't worry about a thing,
'Cause every little thing gonna be all right.
なんかも、ストレートな言葉で、疲れているときに聴くとグッと刺さります。他の歌でも度々引用される言葉です。全世界で今もなお愛されている所以もわかる気がします。
以上、ROOTS編はここまで。だいぶレゲエの雰囲気が分かってきたと思います。お付き合いいただきありがとうございます。次はDANCEHALL編です。ルーツとは全然違う雰囲気なのでお楽しみに。