馴染みのない方へのレゲエのすすめ その3 -DANCEHALL編-
この一連の記事は、「レゲエ=ジャマイカから世界に広まった音楽」を、そのままでは広すぎるので、「ROOTS」「DANCEHALL」「LOVERS ROCK」の３章に分けて、馴染みのない方（特にアニソンファン）向けに私なりに紹介していこうというものです。今回は「DANCEHALL」ということで、前回までの「ROOTS」とは雰囲気がガラッと変わります。
もともと生まれた当時のダンスホールとは、それまで生音中心だった（ルーツ）レゲエに対して、打ち込みによる音作りをした曲のことを指していたそうですが、（割と回顧主義が強いルーツに対して）ダンスホールは時代とともに様々な音楽を取り入れて激しく変わってきた界隈であり、今ではヒップホップやR&B、EDMとの境界も曖昧な音楽です。強いて言うならば現場志向の曲といったところでしょう。現在レゲエがクラブミュージックの一種、というイメージが強いのは、この界隈の台頭の影響です。この広い界隈を包括することなどは諦めて、私の好みのものを紹介していきます。
まずはこの人を紹介せざるを得ないです。この人は、アルビノのために親に捨てられ、周りには「Yellowboy」と呼ばれ差別された、という過去を持ちつつ、なお自らを「Yellowman」と名乗ってアルビノを武器にし、ダンスホールの初期を支えたDEEJAYです。独特のノリとフロウで中毒性が凄いです。ルーツより裏打ちの役割は薄くなって、ベースとフロウでノリを作り出している感じがします。なんかよく分からないけどハマります。この曲は「もうboyとは呼ばせない、そこら辺の女なんて俺に一目ぼれだ。」と自分を誇示する内容です。「ズングズンググズングゼン」と歌詞の意味より語呂を重視して繰り返すあたり実質電波ソングですね！（そう思うのは私だけかもしれません）いや、（不）真面目な話、レゲエと電波ソングの共通性は高いと思います。
・比較的単純なコード進行
・歌詞の意味より寧ろ語呂重視で繰り返す
・度々下品な歌詞
・合いの手がよく入る
・唐突のフロウパート
・わざと音階を外した歌い方
...話が逸れました。Yellowmanは全部同じRiddim（ボーカル以外の部分；詳しくはその1に書きました）で歌だけ変えたアルバムを出すとか、色々面白い試みをした人です。ひとつのRiddimで様々な歌い手が歌った曲を纏めたアルバムを「one way」と呼んだりしますが、レゲエ独特の楽しみ方のひとつだと思います。要するに、同じコード進行で違うメロディの可能性を知ることができます。ダンスホールの原点と言われるRiddimがこれです。
前の記事で紹介したLASTLIONのRemixでも使われていますね。こういう電子的な雰囲気はダンスホール全体に共通する特徴でしょうか。ベース音などをわざと切ったり戻したりするのは「パンピング」と呼ばれるよくある手法です。またこの動画、導入の部分で急に曲が切れて、また最初からやり直しになるのですが、これもクラブやライブなどでよくあるレゲエ現場独特の盛り上げ方です。クラブで好きな曲が流れ始めたときのアガりをもう一度味わいたいっていう心の現れでしょうか。
時間を進めるとこれ。
こういうブラックな雰囲気の曲もダンスホールの魅力のひとつです。この人はラテンっぽさもほんの少し漂う歌い方が特徴です。
この曲を歌うBusy Signal、甘い歌声がとびぬけています。音色も甘い、あまあまです。彼女はエリート会社員、私はしがない警備員、といった職場での恋を描いたMVもエロいですね。こういった甘いラブソングは「LOVERS ROCK」の章でまた紹介します。
こういう、カリブ海のリズムっぽい感じがレゲエっぽいと感じる方もいるかもしれません。ノリに必要な溜めの技術が凄い曲だと思います。こうやってみんなで同じ踊りをするのはアニクラの楽しさにも通じます。現場志向の感じが漂う曲です。
ステータスをR&Bな方向に振るとこういう曲。
こういう、歌い手の片方がメロディ重視のサビを歌って、もう片方が間のフロウパートや合いの手を担当する、みたいなコラボはよく見かけます。この曲を歌っているBeenie Manはよく「King of Dancehall」とも呼ばれる重鎮です。
最近は、HouseみたいなEDMに振れた曲が多いです。
まだまだ紹介したい曲は沢山ありますが、とりあえずダンスホールのルーツとの違いは感じ取って頂けたと思うので、今回はこの辺にしておきます。次回は「LOVERS ROCK」編です。ダンスホールで紹介しても良い曲も多いですが、特に甘い曲調と歌声の曲を紹介したいと思います。